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ここでいう〈センター集中記帳〉とは、いくつかの支店の事務処理のため設けているセンターに集中して記帳することである。
センターでは、コンピューターを使って効率的に事務処理ができる。
そのためには、為替振込の場合は、取引先企業などに振込明細書にまとめて書かせ、振込二日前までに持ってこさせ、それをセンターへ回す。
浜松支店のポスターは、〈一件当たりセンター集中によるコスト節減効果二二○円〉と記している。
また、〈非集中件数月間五七件〉を客にやらせれば、〈年間コスト減一五万四六○円〉となると記している。
この浜松支店の事例は、行内の表彰制度で金賞、銀賞を受賞したもので、「心と知恵のサークル活動全国発表会発表集」に掲載されている。
この発表集によると、〈コスト意識徹底を店内。
Rを中心とした二している〉、ころに入る。
ここにあるく一次対策〉とは、さきの店内ポスターなどで行員の〈コスト意識徹底〉をはかったほか、取引企業の〈電話事前工作強化〉や〈店頭対応はテラーでなく為替記帳班が担当する〉ことだった。
客が銀行の〈事前工作〉にしたがって振込明細書にまとめてこないと、テラーの後方の為替記帳班に回され、それだけ余計に待たされることになる。
待たされるのがいやなら、センターに集中できるよう一日前までにまとめて持参しろ、というわけだ。
この「待たせ」戦法はよく使う。
窓口で待たされるのがいやなら、機械を使いなさいというわけで、一般の客も自分で機械を操作させられる場合が多くなっている。
客に操作させた〈コスト減〉の何円かは、むろん銀行のふところに入る。
しかも、重要なことは、昔のソロバン勘定では手間と経費がかかった小口取引が、コンピューター勘定で一変していることだ。
コンピューターの端末である自動機械に客をうまく誘導すれば、客が自分でコンピューター勘定に乗ってくれる。
いまでは、客をこのコンピューター勘定に乗せるため、それに従わない客を店頭で三○分でも四○分でも待たせている。
客の苦情で一番、多いのは、この「待たせ」となっている。
たとえば「お客様の生の声アンケートあえて苦言をいわせてもらいます」(「すその』八六年九月号)は、〈何らかのミス、トラブルがあったと思われるお客様一○○人にアンケートにお応えいただいた〉もの。
そのうち〈五八人のお客様が、「当行の接遇・サービスに不満、不快を感じたことがある」と答えられ〉ているという。
このうち、次対策が実り、対象件数の八一%まで集中に成功!〉し、〈六一〔一九八六〕年一月には一○○%集中している〉という。
客に手伝わせた効率化で、〈年間コスト減一五万四六○円〉は、そっくり銀行のふと不満の対象は、「待たせ」をやらされる窓口のテラーにたいするものが最も多く三二人。
また不満の理由は〈待ち時間〉が最も多い二七人となっている。
F銀行では接遇向上運動を展開しており、このアンケー卜もその一環だった。
人事部教育研修室は、シリーズのビラ「レッッ・スマイル」で、行員たちに笑顔を要求している。
このビラには、接遇向上運動のスローガン〈接遇とはあなたの心の表現ですF銀行の心の表現です〉を毎号、掲げている。
このビラからも、〈F銀行の心〉がなにかそれなりに読める。
「レッッ・スマイル」が説く〈繁忙時の応対〉には、〈待つ身になって、いっしょうけんめいに働いている一人ひとりの姿は、ロビーのお客様だけでなく、仲間にもさわやかな印象を与えます〉とある。
そして、待たせるときは、〈笑顔プラスひと言がポイントです〉と行員たちに呼びかけている。
それは、けっして仕事の仕組みを待たせないように変えることではない。
「待たせ」をも武器にして、客をコンピューター勘定に誘導し、行員たちにたいしては効率化と人くらしで自らを締め上げさせることである。
とても笑顔でごまかせるものではない。
全国の各支店は、それぞれ効率化のノルマを押し付けられている。
その効率化の多くは、コンピューターで一括処理するため、センターへ集中するものである。
そうした効率化の「店内営業部門軽量化計画(TKこのノルマ一覧表は、やはりロビーの客から見えない店内に張り出されている。
行員たちは、このノルマを達成すれば、配点(点数)をもらえるが、達成しなければやはり減点となる。
その配点の合計でその支店の評価が決まり、支店長や担当責任者、行員たちの人事考課ともなる。
業務効率化のいくつかの評定項目で最も配点が多いのが、一五点の〈事務センター集中記帳率〉である。
このなかには、〈支払取引省力化率〉〈収入取引省力化率〉〈預金センター集中記帳率〉〈為替センター実っている。
新人事制度の導入とともに実施された「コース・資格制」のもとでは、現実に総合職コースをたどる女集中記帳率〉などが含まれている。
配点が二番目に多い一○点となっているのが、〈店内部門人員効率指数〉と〈システム商品等拡販件数〉である。
前者は行員たちの人員をいかに削減、排除するかという首切りノルマで、後者はもともとコンピューター勘定に乗せるために開発した商品をどれだけ売るかというノルマである。
このほかいくつものノルマがあるが、たとえば〈事務センター集中記帳率七九・五%〉というように、ノルマが決められている。
それを達成しないと、その配点にあずかれない。
これらの業務を担当する行員たちは、「仕事がらくになるから」といわれて効率化のノルマを押し付けられ、また、さきにみたようにセールスのノルマもあたえられる。
それらをこなすには、残業しかない。
が、残業手当までが、〈時間外予算〉の枠内に押えられ、実際上、ダダ働きのノルマをあたえられている。
また、効率化のノルマを達成すれば、人員が〈ムダ〉になっていると人をへらされ、自分の首を自分でしめさせられる結果になっていく。
F銀行では、ノルマで追い立てるのがいわゆる「目標管理」であり、ダダ働きのノルマを強いるのが「時間管理」であり、さらにノルマ達成実績が人事考課となるのが人事管理である。
こうした網の目の管理の総体が、F銀行の労務管理となっている。
財界ではF銀行での労務管理の実績が買われたのか、M相談役は財界の労務対策本部である日経連の労務管理特別委員長をつとめてきた。
そして、財界の労務対策部長として彼が最近あげた功績は、雇用機会均等法の実施だった。
「男女平等」をうたった雇用機会均等法の悪用を先取りした見本がF銀行で子はわずかで、九九%までが事務行員の一般職コースをたどっている。
八四年以来、女子も大卒しか採用していないが、彼女らは高等教育を受けながらそれにふさわしい仕事はない。
さきの従組調査でも、その結果が鮮明になっている。
男子行員は、ノルマをあげて出世するには、時間外労働のダダ働きを長時間つづけ、それが職場の不満でダントッになっていた。
だが、女子行員の不満の第一は、〈上司の態度、考え方、能力〉で、男子の〈時間外労働の多いこと〉を上回る四四・二%となっている。
これにつづいて〈仕事がきつく余裕がない〉〈職場におけるコミュニケーションの悪さ〉をあげている。
男子が仕事づけなのにたいし、女子は管理する側の上司や仕事そのものへの不満が強い。
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